生きているか動物図鑑の蛇や亀  宇多喜代子

せつない。何がせつないかと考えると、この問いをされて、自分が即座に「生きていないだろう」と答え、そして、多分作者もそれをわかっていて聞いているように思えたからだ。
しかし、それもまた少し違うと気付く。爬虫類のページに載っているそれらの生き物は、長生きをするとよく言われるものであったり、神話に出てくるような特別感のあるものだったりする。一瞬、もう生きてはいないだろうと思ったものの、もしかしたら、生きているかもしれないと、作者は希望を持っているのだ。
そして、改めて聞くのだ。「生きているか」と。希望を込めて。

「円心」(『俳句 9月号』角川学芸出版より)