新秋の蛇口に映る顔長し  藤崎幸恵

週刊俳句228号「天の川」より。
銀色は鏡に似ていて、自分が映る。蛇口だけではなく、スプーンだってそうだが、蛇口があるところは、台所以外、鏡があるところが多い。
鏡はまっとうな姿で映るから(そう思っているだけかもしれないが)その姿にあまり不満は抱かないが、その鏡を見てすぐに、蛇口に映った歪んだ自分を見ると、少し驚く。そして、徐々に面白くなり、その姿を楽しめる。中には、わざと変な顔をしてみる人もいるだろう。
銀色の蛇口は最近なくなってきたが、学校の蛇口がそれだったからか、世代を問わず通じる句であろう。子供から大人まで、だれもが日常的に起こりうる「あるある句」の一つである。