秋の蚊といへども喰はれてはやれず    小豆澤裕子

句集『右目』(邑書林 平成22年)より。

蚊を殺した後の句だろう。先日、電車の中でふと隣席の肩に蚊が止まった。叩くわけにいかないので、じっと見ると、飛んで私と別隣へ行った。やれやれと顔をあげると、向かいに座っている人と目があい、その人はまた、蚊の飛んだ方向に目をやった。きっと、私も向かいに座っていた人も、「喰はれてはやれない」人だろう。そんな人から考えて蚊に秋なんて関係ない。血が吸われた後痒くならなければ、蚊の生存率はあがるのではと思う。