虫売りは陰陽で言うと陰だ。虫売りそのものが黒い大きな影のような存在に思えてならない。
それは、虫売りという存在に対して、「やる気」をそんなに持っていないという私の先入観から感じるものだが、影法師に気付いた虫売りは、虚無から恐怖へ変わり、恐怖から残った若干の気味悪さをもてあそぶ。しかし、しばらくすると、その影法師が自分から出ている自分の延長であることに気付き、また暗い穏やかさを取り戻す気がする。
暗く、しかしながら広く穏やかな空気を携えている句だと思う。
『中村和弘句集』(ふらんす堂 2009年)より。