初雪のことに洗濯ものに降る   林誠司

初雪の降る空間は、どこか明るく光をたくわえている。実際には、初雪は、特別に洗濯物にばかり降るわけではないが、洗濯物の白さ、清潔な光が、初雪の光と呼応していて、まるで引き合っているように見えるのだろう。ささやかな生活の、ささやかな美しさが、シンプルにかきとめられている。

第二句集『退屈王』(文学の森 2011.8)より。角川春樹『流され王』を彷彿とさせるタイトルである。集中、大景をとらえようとした句より、身辺の些細な出来事を描写した句に、精細がある。きっと人間を深く愛せる人なのだろう。

土手に座し子の縄跳びをかぞへをり
すき焼のフライパンごと出されけり
ハートあり星あり春のらくがきは
イルカショー子の鼻づまり治らぬか
愛されてゐてどつさりと九条葱