大烏屍肉つつくや嘴灼けて  小澤實

大きな烏が、その黒い体を揺らせながら、屍をついばんでいる。そのなまなましいくちばしは、夏の強い太陽の日差しに灼けて、ぎらぎらと照り映えている。いや、屍に濡れて、てらてらと照っているわけだが、それを「灼けて」という季語で表現したことで、夏の暑さや激しい日の光まで、一句の世界に描きこまれている。エドガー・アラン・ポーの「大烏」を思わせる不気味な句だ。

「俳句」(角川学芸出版)2011年10月号、特別作品50句「閻浮檀金」より。骨太、絢爛、自身の文体も確立していて、今もっとも個性の光をはなっている作家のひとり。芭蕉の匂いもする。以下、同作からいくつか。

霍乱や耳を出でたる金の龍
雲の峰真上より見る死後のごとし
夕立を走り来顔を洗ひつつ
すいくわ泥棒西瓜割り食ふすいくわの中
鶏頭の庭は畳に伏して見よ

今号では、宇多喜代子句集『記憶』の特集も組まれている。田中亜美によるインタビューは、俳句の作品を通して、宇多の魅力に迫っているところが、何より誠実で面白い。一句鑑賞に、私も文章を寄せている。大好きな句について書いた。