晴天やなんだといわれ森の猫   長嶋有

街の中で猫に出くわすと、すこしの驚きとともに、
日常から離れたような気持ちになるのだ。
しかし、ここは森である。
街にもいる「猫」、ではなく、森にしかいない「なにか」、に出会いたいのだ。
街の中で猫に出くわすということも日常に含まれてしまう森の中で、
日常の位相が移行していることを実感するとともに、
人間の欲深さ(期待の強さ)のようなものも感じる。青空が気持ちいい。

『ユリイカ 10月号』(青土社、2011)より。特集は「現代俳句の新しい波」。