世界病むを語りつゝ林檎裸となる   中村草田男

林檎を剥き食べながら、というリラックスした状態で語る世界の病理。
揺らぐようなこの文体が、くるくると剥かれる林檎の皮を思わせる。
我々は「世界」に対する希望をどこかに抱いている。
だからこそ、「世界病む」という風に思い至り、それを憂いてしまうのだ。
健康な「世界」は斯くあるべき、ということについて、
皆それぞれ違いながらも、芯の部分では同じである、と思いたい心理は、
人間への希望であろう。世界とは、人間なのかもしれない。

横澤放川編『中村草田男句集 炎熱』(ふらんす堂、2011.9)より。