目の前で水着を絞る女かな   杉原祐之

裸で、ではなく、着替えてから(せめてタオルを巻いて)、絞っていると読みたい。
さっきまで彼女が着ていた水着は、彼女によってねじられて、もはや原型がない。
あんなに楽しそうに水遊びをしていた女は、打って変わって真面目な顔で水着を絞っている。
非日常から日常への転換が、このようなかたちでまざまざと見せつけられるのだ。
「目の前で」という言葉には、少なからず衝撃を受けている様子が感じられ、
そんな姿を見たくなかったという気持ちがこもっているようだ。
それでも、彼女の腕の筋肉と水着から零れる水から、目が離せないのである。

『先つぽへ』(ふらんす堂、2010)より。

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