長夕焼旅で書く文余白なし   田中裕明

手紙を書いているのだろう。
家であれば、書きたい内容をあらかじめ考えてから筆をとるのであろうが、
旅先となると、書き始めてからあれもこれもと書くべきことが浮かび上がってくる。
この俳句の文体自体、内容と同じく、言葉がぎゅうぎゅうしている。
旅での出来事が思い出になってしまうのを引きとめているような「長夕焼」が美しい。

『山信』(「澤 100号」澤俳句会、2008)より。