『椋No.42』より。
谷川史子の漫画に「くらしのいずみ」という短編集がある。夫婦をテーマにしたアンソロジーなのだが、そのなかの「島岡家」の中で、夫ではない人と、一夜過ごした罪の意識を持った妻が、逆に夫が何を考えているのかわからないと夫にやつあたりをするシーンがある。そのやつあたりに対し、翌朝夫が自分の畑からとってきた野菜を見せて、「ぴかぴかして元気ですべすべしている。お前みたいだ。これで味噌汁作ってやる」と言うシーンがあり、一人で赤面してしまった記憶がある。
朝食はパンとコーヒーで済ませてもいいと思っているひとも多いだろうに、野菜を切るという手間を惜しんでいない。人のためかもしれないし、自分のためだけかもしれないが、その行為に、生きることへの愛情を感じて、きゅんとしてしまう。