大の字に寝て十月をはみ出しぬ  しなだしん

句集『隼の胸』(ふらんす堂 2011年)より。

畳の部屋にいると、大の字に寝たくなる。床に自由に転げていいのだよと、許されている気がするのだ。今の自室は畳なのだが、残念なことにベッドを置いている。せまいので、なかなか大の字にのびのび寝るということはないが、部屋がきれいな時は、基本的に床に転がっていることが多い。この句は室内とされているわけではないので、花野で大の字になったりしているのかもしれないが、大の字というと、私は畳を想像してしまう。

季節に幅とか形はないのだから、自分ひとりが寝返りをうとうが、大きく寝て見せようが、体が季節の境目にあるということは実感しづらい。10月ももう終わろうとしている。その終わるということを、「大の字になったらはみだす」くらいであると表現された比喩が面白くて惹かれる。