サルビアの暗黒つづく舗道かな  田中亜美

『円盤』(詩客 2011年10月28号)より。

昔、近所に「サルビア」というプラモデル屋があり、兄の誕生日にはその月のおこづかい500円を持ってプラモデルを買いに行った。プラモデル屋の前にはいつもおじさんが立っていて、通学の往復を見送ってくれては話しかけてくれた。店の前にはサルビアが咲いていて、その蜜を初めて吸ったのも、おじさんが勧めたからだ。
サルビアの赤は、決して華やかすぎる赤ではない。しかし、印象に残る色ではある。甘い蜜を持っていて、私はその花にマイナスのイメージを持っていなかった。しかし、サルビアは舗道に咲く姿をよく見る。それは、人間が意図的に植えているからだろう。そこに人間の意思が入るだけで、サルビアの赤に意味が出てくる気がする。