六大家って知ってっか?川柳の話だよ 「第5回 待ってましたの麻生路郎1」

橘高薫風編『川柳全集2麻生路郎』構造社出版、昭和者54
「川柳雑誌」「川柳塔」1000号記念出版『麻生路郎読本』川柳塔社出版、平成22

心が毒キノコみたいに腐ってた23歳の頃(もう5年も前かぁ)のお話

新宿でふらふらっと汚いおじさんが近寄って来て
「息子のところに行かないといけないのですが、財布を落としてしまい、後日必ずお返ししますので千円貸していただけないでしょうか?」
まぁどう見ても絶対に嘘なんですが、もうほんとその頃心が腐ってたので
もしこのおじさんが僕にお金を返すようなら人間も捨てたもんじゃないんじゃなかろうか、とひどく歪んでいた僕は千円を貸してしまったのでした・・・。

あぁ悪い事したなぁ、ひどい事したなぁと後日とても後悔しました、人が人を試すなんてやっちゃいかんのです、時々、あの時は1000円でカツ丼でも食べるべきだったんだと思いだします。日々少しずつ何かが蓄積していって、優しくなくなっていくというのは非常に怖い事です。

だから、だから川柳を読みましょう、良いやつを(こう繋がるのね)。

さぁどんぞこに暗いマクラだぞ、また心配されてしまう、本題に入ります、六大家シリーズ第二段、待ってましたの麻生路郎(あそうじろう)、はじまりはじまり~

麻生路郎(明治21~昭和40)は尾道生まれの大阪育ちという事があり、大阪生まれの尾道育ちの僕には特別な思いがあります。
尾道の観光名所に文学の小道というのがあって、そこで何句か路郎の句が石に掘ってあって読む事ができてですね、おっ、こりゃ面白い、とノートに書き写したのが、僕が川柳を読むようになったきっかけですなんです、僕は郷里の英雄にはとっても弱い。
麻生路郎という人は川柳の世界では知らない人はいないという有名人で、作家紹介は一回分使うぐらいかかるし、今さら感がありあまり気がすすまな・・・、あ、ちが、早く作品にいきたいだけです。

ざっくりざっくり紹介しますと、大正13年に「川柳雑誌」を創刊しました、これがまた大結社でですね、戦争の関係で一時中断しましたが、路郎の亡くなる年まで、つまり昭和40、9月号(路郎は7月に亡くなりました)麻生路郎追悼号にて終刊となりますが、460号まで続きました、立派ですね。ちなみにその年10月に中島生々庵さんが「川柳塔」を刊行し、その四代目の河内天笑さんへと続いて行ってます、ややこしい?うーん

「川柳塔」ですと言われたら、師系は麻生路郎という事です(ざっくりだなぁ)。

麻生路郎は人間としても魅力的な人で人気があったのもよくわかります、その辺は『麻生路郎読本』を読むと良いです、あと田辺さんの『道頓堀に別れて以来なり』にも出てきます、大阪ですからもちろん岸本水府と会ってるわけです。あと重要なのは、昭和11年7月に「川柳職業人宣言」というのを行います、まぁ俳句もそうですが将棋とかと違いプロ、アマの区別は難しいですね(そういう論争の質問は僕には向かないのでしてこないでくださいね、きりんのへやは難しい事言わない部屋)、まぁ六大家というのはみんな4Sみたいな存在ですし、どう見てもプロ中のプロなんですが(指導者としての意味も含め)、敢えて路郎は公式にプロ宣言をするんです、ざっくり言えば、誇り高くいこうぜ、俺はやるぜ、ついて来てくれ、というパフォーマンスかなと思います、路郎さんは句を見ても生涯を見ても熱い人なんです。だいたい尾道の人なんだから悪い人なわけがない(贔屓)。

うーん、もう、作品に行って良い?良いよね、良い句がいっぱいあるんで早く読んでいきたいのです、さ、出発!ゴー、路郎ゴー!

大臣になれぬことだけわかつたり

僕にもそれはわかつたり

歯が痛い さうかと亭主出てしまい

僕もそんなタイプなり

日あたりのいいうちだが 物足りなさに 変りない

安定や幸せなんて、ね、ロックじゃねぇ、餓えていこうぜ

金は無くとも 金は無くとも 君と僕

そうともよ、ね、そうでしょ?金はなくとも

心にもない約束が 明日(あす)となる

なんて言いながら美女と待ち合わせがしたい

突撃で別れたまんま そのまんま

畜生っ、バカヤロ!とやりきれなさがよく出てます

彼の一生 雨雨雨のままだつた

おおぉ、どしゃぶりでいこうぜ!

ああ僕も 汽車を下りしに ゆくところなし

ここじゃないどこかにゆくのさ、ろくでなしで男前

うんそうだ そりアそうだと たかられる

タハハハ、よくわかる、うん、そうだ

十二月まがりくねつたとこで飲み

これも男の孤独感が良い味で出てます

かんにんしてと キツス 両手でふさがれる

キャッ、かんにんならんぜよ、ふふふ、なんて青春があっても良かった

惚れられているとは知らぬ十三四

キャッ

友達をみんなだましと 南に居

これ、だめなんだけどカッコいいな、山頭火みたいなダメなカッコ良さがある

泣けて来るほどに恋しき君ならず

なんて負け惜しみを言いながらイカをかじる夜があっても良い

薄情と云はれうなずく薄情さ

あはは、なんて薄情な、薄情なんだけどちょっと可愛いですね

どうでしょ?カッコいい句まだまだあるんですよ、読みたい?読みたいって言って、麻生路郎の句を読むと、人間もなかなかカッコいいじゃないか、と思える、人生クソッタレな事ばかりじゃありません。

カッコいい川柳はカッコいいのだ

そんじゃ今日もいつものあれだぜ、はいっ

バーイ、タハハ、寝よっと