霜夜子は泣く父母よりはるかなものを呼び   加藤楸邨

父も母もこんなにもすぐそばにいるのに、泣き止まない子。
子の泣く理由を「はるかなものを呼び」と実態なきものに託し断定するところに、
恐ろしくも美しい、はるかなもののいる世界を垣間見せ、また、
現実世界に生きる父母、子の、どうしようもないやりきれない思いがまざまざと見えてくる。
「霜夜」の透きとおるような寒さと、子の涙が響きあうようだ。

西村和子『NHK俳句 子どもを詠う』(NHK出版、2011.11)より。