斧入れて香におどろくや冬こだち   与謝蕪村

薪を作っているのだろう。私を暖めるものとしての木の頼もしさを感じる。
寒く冷たい枯れた景色の中でも、木は生きていて豊かに香っていることへの驚き。
ここで使われている「や」は切れ字でありながらも、
現在よく使われている、取り合わせへの距離を見せる切れ字ではなく、
「おどろく」を強調するものとしての「や」である。
このような純粋で欲のない言葉のつながりに、俳句というものを考えさせられる。

『蕪村俳句集』(岩波書店、1994)より。