水よりも汚れてゐたる氷かな  上田信治

『ゐのしし園』(落選展より)

一般的にある程度の重さのあるものは、水の中では沈む。しかし、実際水には埃などが結構浮いていて、水が凍ったことによってその異物が見えてくることがよくある。決して水がきれいなわけではない。氷は固体であることから、罅が入るし、曇ったりもする。水は氷になった瞬間、自分に含まれている異物をあらわにするのだ。
まじまじと少し汚れた氷を見る。もしかしたら、この氷は薄く、その奥には水が液体のまま存在するかもしれない。氷をよけると、やはり水は氷よりもきれいに見えるのだ。