頬杖の風邪かしら淋しいだけかしら  池田澄子

句集『拝復』(ふらんす堂 2011年)より。

「かしら」を使用することで、本当に話しているようで、日常感と軽さがでてくる。2回使用されていることで、相乗効果が見える。
体が忙しいとき、人はあまり頬杖をつかない。そんなに動かなくていいとき、テーブルに肘をつき、頬杖をつくのだ。頬杖とは不思議なもので、考え事がはかどる。考え事をしていると、余計なことまで考えてしまう。ふとした瞬間に頬杖をついてみると、うっかり考え事をしてしまったのだろう。もやもやしていて、うまく物事を進められていないのは、風邪をひいて弱気になっているからか。でも、これから年末で、この忙しい時期に風邪をひいているわけにはいかない。淋しいっていうことにしよう。
本当に淋しいのかもしれない。けれども、淋しさも利用できるこの女性は強いひとだと思う。