人死なぬ日のなかりけり氷水   八田木枯

上五中七のフレーズが、ばっちり決まっているにも関わらず、
ドヤ顔(うまいこと言いましたよ感)があまり見えないのは、
どこか小さくつぶやくような、諦めにも近い思いが感じられるからであろう。
かなしみでもなく、さみしさでもなく、諦め。大人にしかできない。
「氷水」が、透き通った明るさを見せ、決して暗い気持ちにさせないし、
もちろんそれでいて、バカみたいに明るい気持ちにもさせない。

『夜さり』(角川学芸出版、2004)より。

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