捕鯨図に血を噴くくぢら十二月  武井清子

句集『風の忘るる』(ふらんす堂 2008年)より。

私が物心ついたときにはもうクジラ肉が市場に出回っていなかった。幼稚園のお弁当にクジラの缶詰が入っていて、くじらって食べられるもんなんだ・・・と驚いたのが一番初めの記憶だ。あとは、T・Pぼんに捕鯨問題が出てきたのが、問題自体との初対面だった。
この句を読んで、一瞬自分が言葉を忘れてしまったのではないかと思った。何も言えなかった。ただ、寒い。この句から感じる寒さは何なのだろう。そこにあるのは、図であり、季語は十二月であり、具体的なものが存在しないからかもしれない。十二月は赤が一番似合う季節なのに、わくわくしないのは、赤が血だからという理由だけではないだろう。淡々とした、匂いのない句だ。