消費税率あがるらし餅伸ばし喰ふ  杉山久子

「あがるらし」と言うことで、他人事として聞いていることがわかる。加えて、餅を伸ばして楽しく食べていることが、消費税率アップへの興味のなさを増強している。「正月くらい明るい話題でいこうよ」と、あえて呑気でいるのだろう。けれども、確かにこういった政策について、私たちが確かな実感を得られるのは、実行されてからなのだ。一個人があわてても仕方ないし、その話題に気を取られて餅が冷めてしまうのももったいない。それもわかるが、温かいもちはよく伸びるけれども、伸びたもちはとても薄くて危うく、なんとなく不安感が残る。幸せになりきれないような気分にもなるが、細かいことをつっこみずらくなるような、気の大きな句である。

「特集・新年詠2012」(週刊俳句246号)より