分度器の影やはらかに日脚伸ぶ  佐藤郁良

分度器自体透明なものが多く、その影はもともと薄くやわらかいものだ。
夕方の机に落ちるその影に、こんな時間にも外の光で影が落ちるようになったのだと、ふと思ったのだろう。おなじ透明な定規のひとつである三角定規より、やはり分度器の方が形はやわらかで、受ける光も柔らかく受けているように思える。
今日東京は初雪が降ったが、もうすぐ春が来るはずだ。

『海図』(ふらんす堂 2007年)より