寒紅やときどき母の国ことば  上野一孝

私の母は嫁入りも同じ県内だったため、ときどきというよりは割と常に国ことばなのだが、今住んでいる町と育った町が違うので、時々わからない本当の地元の言葉を話したりする。
ふとした瞬間に、嫁入りのために遠くなった言葉がでるのだろう。寒紅が季語であることで、若かった頃の母を思い出ださせると同時に、今の母の色気も感じる気がする。
私も地元を離れてもうすぐ10年。地元を離れても、いまだに地元の言葉は出るけど、こういう母になるのだろうか。

句集『萬里』(花神社 1997年)より。