2012年1月25日

箱に満ちて箱溶かしむる春の水

角川文庫で杉本一文が装幀といえば、半村良もそうだった。
『幻視街』は、段ボール箱の一生が箱の一人称で語られる怪作「ボール箱」を収録。

半村良といえば森村誠一、西村寿行と合わせて「三村」と呼ばれたベストセラー作家だったが、三者に共通しているのは権力悪や管理社会の抑圧への怨念に近い反感で、この辺を読むと安定のイメージの強い80年代も、個人個人にしてみればそんなに生き易い一方なわけではなかったなと感覚的に思い出す。


*半村良『幻視街』角川文庫・1980年