人を二度切つたる鎌鼬のにほひ  望月周

人を切ったことのない鎌鼬と、人を一回切ったことのある鎌鼬、二回、三回とそれぞれ匂いは違うものなのだろうか。鎌鼬は素早いだろうから、残り香に近いかもしれない。もう匂いは覚えたのだから、次は近づかれたときにわかるだろうと、少し前向きな気持ちが読める。鎌鼬の匂いとは、どういったものだったのだろう。獣臭がするのだろうか。風のように軽やかだから、もう少し軽めの匂いなのかもしれないと、想像すると楽しい。ただ、匂いがわかったとしても、この人は鎌鼬を防ぐ方法がわからないだろうな、と微笑ましく思う。

「冬ゆやけ」(週刊俳句249号)より。