風邪をひいて苦しそうな子に、我慢して頑張っているご褒美として、どんな指きりをしてやるか。ディズニーランドじゃありきたりだし、メロンを食べさせてあげるというのも普通すぎる。
この子は、「あひるの仔飼ふ」約束をした、という。そこがユニークで面白い。文鳥だとスマートだし、鶏だと日常的すぎる。あひるという存在の、適度に抜けていてかわいらしくユーモラスなところが、この句の魅力になっている。こうやって書いていると、わたしがあひるの子を好きだからこの句が好きみたいに読めるかもしれないが、むしろ、この句があったから、わたしがあひるの子を好きになったといったほうが正しい。
西村和子さんの新刊『NHK俳句 子どもを詠う』(2011年11月)「風邪の子」項より、引用句の中から。古今東西の子どもにまつわる俳句を集め、テーマごとにエッセイ風に書き起こした本で、なんにせよ、子どもの愛らしさを思わずにはいられなくなる一書だ。個人的には、表紙のイラストを描いているコイヌマユキさんのポストカードを、昔から好きで収集していたので、嬉しかったです。