あはす掌の冷の違へる桜かな   中西夕紀

荷物を持っていたりして、片手を外気にさらしていると、その手だけが冷たくなったりする。
もう片方の手は、ぬくぬくとポケットの中にいたりすると、なおのこと。
部屋の中でも、マウスを握る手と炬燵に入れていた手がキーボード上で出会い驚くことがある。
同じ自分の体だというのに、違う体のようで、不思議な感覚に陥ることがしばしば。
なにかを祈りつつ、私とは違うと思っているひともどこかでつながっているのかもしれない、と思い、
少し心が温まるような気持ちになるだろう。華やかな桜が、明るい気持ちを盛り上げている。

『朝涼』(角川学芸出版、2011)より。