椿となるべき魂あかく精神科  齊藤愼爾

この句は、正木ゆう子の「馬となるべき魂あをく雪原に」(『静かな水』)のパロディ。それを踏まえると、雪原をほしいままにする魂に対して、精神科に閉じ込められた魂が、より痛々しく感じられる。追いつめられた精神の発する悲痛な激しさは、まさに椿の赤、だろう。

齊藤愼爾句集『永遠と一日』(思潮社、2011年10月)より。