花柄を着て南極へ西行忌  ドゥーグル・J・リンズィー

西行忌の句で、かつてこれほど突拍子もなく、明るく、奔放な句はなかった。しかし、南極へ行くときにあえて明るい花柄の服をチョイスする感覚には、厳しい環境の中に身を置く不安も垣間見える。その明るさと一抹の不安の、バランスが絶妙な句だ。旅の詩人であった西行が、もし現代に生まれていたら、南極にあこがれを抱いただろうか。

句集『出航』(文学の森、平成20年12月)より。プロフィールとともに記載されている作者の住所を見ると、「泥亀」という地名に出会った。泥亀…生き物をこよなく愛し、句に詠み続けるリンズィーさんにぴったりの、あたたかい地名だと思った。