春眠をそこに残して出てゆける   如月真菜

日常として、自分がよく早く家を出るということかもしれないし、同棲した交際相手との別れなのかもしれない。でも、「出てゆける」と、可能を敢えてつかっていることから、後者なのかな。と思う。
一人できめて、一人で出ていくのだ。相手はまだ春眠の中にいて、そのことには気づかない。気付いてほしいような、ほしくないような。そんなぼんやりとしたはっきりしないような気分も、家を出て春の穏やかさに包まれたら、少し救われる気がする。

句集『菊子』(ふらんす堂 2007年)より。