春の闇鬼は手の鳴るはうに来る  岩淵喜代子

春と鬼の組み合わせということから、坂口安吾の『桜の森の満開の下』を連想するが、この句に詠まれている句は遊びの鬼のことだと思う。「春の闇」であるから、そんな時間に子供は遊ばないだろうから、大人が遊んでいるか、昔の遊びを思い出しているかだろう。人が見えないのに、手が鳴るから人はいるはずなのだという、鬼の不安と、暖かくなってきたのに月のない夜の不安感がシンクロしている。

句集『白雁』(角川書店 2012年4月)より。

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