山々に神のあらそふ青嵐  佐藤郁良

4月から改めて山の近くに住むようになって、つくづく日本昔話などの発端に納得する日々だ。もともと山の近くに住んでいたのだけれど、初めて神がいそうな山だなと思ったのは、大分県に行ったときだった気がする。地元の山とはまったく違うその姿に感激した。けれど、大分出身の人は私の地元の十和田に行ったときに「山には神がいるんだな」と思ったらしい。宗教というわけではなく、何かに守られている気がするのだ。それぞれの山に個性があって、それはそこの神の個性かもしれない。眠りから覚めた頃、少し争いがあるのかもしれないが、あらそいがひらがな表記で柔らかいことから、青嵐が心配するほどではなくて、さわやかにすら思える句だ。

句集『星の呼吸』(角川書店 2012年4月)より。