起立礼着席青葉風過ぎた 神野紗希

 日直の号令が掛かると、教室の雰囲気が一変する。それまでのざわめきが消え、静かな緊張感がひろがる。その瞬間に吹き過ぎていった「青葉風」。清々しい一句だ。

 日直の号令をそのまま引用した「起立礼着席」の言葉からは、教室の生徒という群像の一連の動作が見え、たくさんの椅子と床とが擦れ合う音が聞こえてくる。一転して「青葉風過ぎた」は、作者ひとりの気付き。この大勢からひとりへの、間を置かぬ切り替えが実に鮮やか。

「過ぎた」の口語表現の効果も見逃せない。「青葉風」の爽快さと相俟って、一句に溌剌とした明るさを与えている。また、冒頭からの漢字の連続のあと、この最後の「過ぎた」で、一句がふっとほぐれる。ちょうど青葉風が吹き過ぎたように。

思い切った言葉の使い方で、高校生らしい素朴で健やかな感銘が詠われている。