父の日の近づいてくる欅かな 神野紗希

 父の日の頃ともなれば、欅の木は青々と茂りを深くする。その颯爽とした立ち姿に、作者は父のイメージを重ねながら、父の日の到来が何となく待たれる気持ちになっている。

 ひと息に言い下した調子の強さがあり、下五もどっしりと据わっている。「かな」の高い響きが活きており、一句を大らかに包みこむ。

 はっと目を引かれる斬新さはないが、欅を通して父へ寄せる安堵感とも言うべき落ち着いた心情がよく伝わってくる。