初日の出板一枚が海に浮く 神野紗希

 一年の始まりである「初日の出」に配された「板一枚」。一見無造作のようであるが、「板一枚」という言葉には単純な強さがあって動かない。もののはじめである「一」という数詞の響きも活きている。初日の光が変哲もない板きれを荘厳しているかのようである。

「初日の出」のめでたさにいかにも見合ったものを配合したならば、文字通りおめでたい句で終わったことだろう。そこをあえて「板一枚」とやつしてみせた点に、いぶし銀の渋い味わいが出ている。こういう句もつくる作者なのである。

 初日の海に浮かぶ一枚の板きれ、その飾り気のない簡潔さに、新年を迎えて改まった心の在り様が重なる