七月、水彩絵具がある。そしてヘルマン・ヘッセの詩がある。なんと抒情的な夏なのだろう。
ヘッセは、詩や小説のほかに、水彩画を描いたから、水彩絵具とヘッセとの邂逅に意外性はない。けれど、時を経て、この夏に、絵を描くためにばらばらと広げている水彩絵具のそばに、ヘッセの詩集が置かれている。もしくは、ふと思い出して口ずさんだのかもしれない。その時を経た運命を思う。
なんといっても、「七月」と置いたのがいいんだろう。水彩絵具の色まで見えてくる。私は青や緑の涼しい色を思い浮かべた。
第三句集『地球のワルツ』(角川書店)より。そのほか好きな句。この句集には、ヘッセやパスカルをはじめとして、さまざまな登場人物が出てくる。彼らが俳句の中でどういきづいているのか、それもこの一緒をひもとくときの、ひとつの楽しみだろう。
斑猫を猫と思ひし妻とゐる
黄落のメトロノームが止らない
大らかなホルンの孤独下萌ゆる
早春の画架に桃色トウシューズ
パスカルの葦流されて冬の河
一月のペン靴かばんこころざし
狛犬の足にたんぽぽ置いてある