田と柳の組み合わせといえば、芭蕉の「田一枚植て立去る柳かな」を思い出す。この句は、かの名句を踏まえながら、田園と柳のただいまの姿を、しずかに描写している。いや、柳のある田園風景をしずかに描写することで、芭蕉の句にはない新たな風合いを書きだしているのだ。芭蕉の句がミレー風のタッチだとしたら、郷子の句はさしずめモネ風だといえるだろう。
語順も面白い。「漣の田面」もそうだし、切らずに「の」で連ねてゆくさきに柳を置くことで、田面にさざなみを立たせて柳まで吹きわたる風を感じることができる。
「椋」2012年6月号より。