灯を消せば鏡しらじら梅雨に入る   林雅樹

灯りを消して静まりかえった部屋は、見慣れている部屋とは違い、知らない部屋のようだ。
静かになってくると、普段は聞こえないような冷蔵庫のモーター音や窓を打つ風の音が気になってくる。
暗い部屋でもなにかの光を受けて、鏡だけが「しらじら」となにを映すでもなく光り、
暗くなったこの部屋を見つめているようだ。
「梅雨」もしらじらと始まるように感じられるところに奥行きがある一句。

「無関心な人々」(詩客、2012.6.29)より。