ひとつだけ違ふコップや海の家  金子敦

少なくとも4人以上で入った海の家なのだろう。この統一感のなさが海の家のチープさをよく表していると思う。この形のコップが足りないんだな。とかぼんやり思ったりして、焼きそばなどを頼み始める。
小さい子供ならそれで「あー、仲間はずれー」とはしゃぐのだろう。でもそれは海にきている昂揚からのはしゃぎなだけだ。コップがひとつ違っても、焼きそばが少しまずくても、テーブルが少し汚れていても、許される強さを持っているのが、海の家なのだろう。

句集『乗船券』(ふらんす堂 2012年)より