蟻地獄木漏れ日がちらばつてゐる  関根誠子

生と死の狭間という大きなものが地面の小さいところに存在している。いくらでも見ていられるのはなぜなのだろう。ずっと目をそらさず見ていて、少し疲れて視界を蟻地獄から少し広げてみるとまばらな光が散らばっている。木漏れ日だと気が付くまでに少し時間がかかって、木漏れ日ということは、ずっと自分は木の影にいたことを実感する。

生と死→蟻地獄→木→太陽。大きなものから小さなものに移動し、再度大きなものに移動していく。徐々に移動するその視界に違和感はない。

冷静に蟻地獄を見ているようだが、前書きに「戦争四句」とある。生と死の狭間に見入られる作者の視線の重さに冷静さは感じない。