暑けれど佳き世ならねど生きようぞ  藤田湘子

暑くて、決して佳い世とは言えなくて、それでも生きようよ、という呼びかけは、ややもすればスローガンの類にとられかねないが、この句の場合は、まさに文語の力が俗に落ちきらないようにとどめているといえるだろう。ならねど、ようぞ。ならねど、ようぞ。ちょっと呪文のように思えてくる。

「生きようぞ」という呼びかけに読者の私は、私にも言葉が届くと思ってこの人は書いている、と喜ぶ。

句集『てんてん』(角川書店・平成十八年)より。