帰省して妹と投げ合ふブーメラン   ドゥーグル J.リンズィー

「ブーメラン」は狩猟などに使われる道具で、まともに使うと殺傷能力があるものだが、
ここでは、傷つけ合ったりする比喩などでもなく、単純に遊んでいると読みたい。
「帰省」というくらいだから、親元から離れて暮らすくらいには大人になった人が、
帰ってきたときに妹とブーメランで遊んでいる姿を思い浮かべるととても微笑ましい気持ちになる。
「ブーメラン」という言葉の響きも楽しいし、広い空間が見えてきて気持ちがいい。
とはいえ、やはり、どこか不気味で不思議だ。
「ブーメラン」というもの自体の不思議さもあいまって、
さらに、ブーメランを投げ合うことがさも当然のことのように描かれているからだろうか。
作者がオーストラリア出身だということを考慮しようとしまいと、
誰かの日常は、私にとっては不思議なのだ。きっと誰かにとって私がそうであるように。

「涅槃の浪」(『超新撰21』邑書林、2010)より。