秋風の吹きわたる頃、黄色い蝶がゆるやかに飛ぶのを見ている。
落ち葉や枯草など、まわりの秋景色の中にも「黄」を見つけ、
それとの対比として飛ぶ蝶を「生きてゐる黄」を描いているとも読めるが、
ただ、「生きてゐる」ことのエネルギー、生命力に感じ入っているだけではない魅力がある。
中七下五のフレーズは、つぶやきのようでありながら強い断定の力があり、
ここに、作者の価値の位置づけ、すなわち、(深読みすれば)、
「生きてゐる」俳句こそが至高であって、そういうものを目指すのだという意志すら感じる。
『不動』(『現代俳句の世界4 山口誓子集』朝日文庫、1984)より。