笑いそびれて水羊羹の皿うごかす  池田澄子

お盆は特に普段会わない親戚と会って話をするため、私にもよくこの状態が発生する。一瞬でもぼーっとしていると話においていかれれる。笑いそびれたら、一番目立つから、できるだけ避けたいものだけど、よくやってしまう。水羊羹の皿を動かし、顔を下にむけることでごまかしてみる。水羊羹は動かされなくてもよかったのに、動かされたことで少し不服そうに遅れてゆれる。このきまずい空気に身に覚えがありすぎで、思わずこれが自分の句だと思ってしまう。

句集『ゆく舟』(ふらんす堂 2000年)より