踊るならあたしの鱗お守りに  竹岡一郎

人魚姫の世界だろうか。ただ、「あたし」としていることで、遠い存在ではなく、日常的な気配を感じる。お守りに渡された鱗に効果はあるのだろうか。人魚の踊りは、私たちが足をつかって踊る踊りとは違うものだろうから、それがいくらほど役に立つのかはわからない。ただ、人魚は歌がうまいということで、音楽のお守りにはなるだろうから、楽しいときを過ごせるかもしれない。陸での踊りに参加できないから、鱗だけでも連れて行ってほしいという、人魚のいじらしさも感じる。

『俳句 2012年9月号』(角川学芸出版)より。