滴れる滴も銀やさんま買ふ  嘴朋子

最近スーパーで頭もはらわたも抜かれて売られているさんまを見て、少し驚いた。さんまほど丸焼きができて便利な魚はないのに・・・。でもやっぱりほとんどは氷の入った水の中で売られていて、ほとんどのおば様方はそこからさんまをつかみ、買っていく。さんまは反射するほど光っており、冷たい滴にその色が映るようだ。食べ物として銀色は決して美味しそうな色ではないのに、この句ではさんまを買うわくわく感を増量している。

句集『象の耳』(2012年 ふらんす堂)