声あらばいかなる声や出目金魚  西山春文

出目金に声があったら、いったいどんな声なのだろうか。この句を読んでから、私も気になってしょうがない。「いかなる声」からもう一歩先、作者がどのような声を想像してみたのかを聞いてみたくなる。私は、はじめはだみ声かとも思ったけれど、よくひびく心地よいアルトでもいいような気がしてきた。それによって、出目金の色つやや表情も違って見えてくる。

「狩」2012年10月号より。「狩」をめくる楽しみのひとつは、鷹羽狩行さんのエッセイ「日吉閑話」を読むこと。ことばが簡潔で、読んでいて気持ちいいし、毎回豊富なエピソードが楽しい。今回は選句の話。ほんの一部分だけ抜粋。

いつだったか、車内で選句をしていたら、私の前に立っている人が、吊革を掴んで覗いていたらしく、「その二番目の句もマルにしてあげていただけませんか」と言うのでびっくり。夜のことで、その人は少し酔っぱらっていた。しかも、俳句をやっている人のようだった。以後、ラッシュ・アワーには選句をしないことにした。

ほほえましい話だ。それにしても「ラッシュ・アワーには選句をしないことにした」は、妥協をしない鷹羽さんらしい。