どか雪のただ中にゐて水が欲し  西山ゆりこ

こんなに、嫌になるほど雪があるのに、それは水に似ていながら水そのものではないので、やはり喉は乾く。その、「雪は水ではない」という当たり前だが忘れがちなことを改めてこのようにスパンと告げられると、ああそうかそうだよねと驚き頷く読者としての私がいる。水が飲みたいというのは生命を維持する根源的な欲求なので、どか雪という過酷な状況の中にいて、生きるほうへグイと舵を切っているいさぎよさも力強い。

角川学芸出版「俳句」2012年11月号、角川俳句賞候補作品「ゴールデンウィーク」より。従来の日本文学の湿った抒情からは遠くはなれた現代のドライな情感がさばさばと詠まれていて、気持ちのいい句群。もっと読みたくなる。

雪間草髪を括つて耳を出す
タクシーのメーターまぶし花疲れ
ゴールデンウィークありつたけのアクセサリー
白シャツのはみ出してゐる回し飲み
虹仰ぎみな湯上りの顔となる
初霜の自転車叩き起こし乗る
セロリの香濃しシャンパンの栓飛ぶ夜