夏の終わりの蝉の声を聞きながら「いろいろあらーな」と心でつぶやいている。夏の終わりの蝉の声は、決してかそけきものではなく、むしろこれが最後といわんばかりにワンワンと鳴き立てる。静けさの中ではなく、賑やかな中に感じ取る終末。「いろいろあらーな」というつぶやきが、諦めというよりは、そういうもんだという了解として自然に出てきた言葉のようで、ジンとくる。
『春 川崎展宏全句集』(ふらんす堂、2012年10月)より。既刊句集六冊に、第六句集『冬』以後の作品も加えた2356句を収録。端正かつ闊達、独自の世界を開いた展宏俳句は間違いなく昭和俳句の最高の達成であり、一句一句が屹立していながら、人の心にじんわりと寄り添う愛がある。今回、晩年の句をまとめて読むことができ、最後の最後まで彼の力が俳句のすみずみにまでみなぎっていたことを確認できた。句を挙げだすときりがない。これからも身ほとりにおいて朝な夕な開きたい本だ。
巻末に収録された長谷川櫂氏の「まぼろしの春――「『冬』以後」解説」も素晴らしかった。「はじめから飽いてゐるのに日日草」などの句を挙げながら、展宏の句に共通する「生きすぎてしまった」という思いに着目し、その根源にある若年期の戦争体験に触れつつ、展宏の晩年の作品を読み解いている。ぜひ読まれたし。