この句が収録されている鑑賞本の著者の岸本尚毅は、
腕白坊主が「竹馬に高く乗り、遊び相手の少女に「俺の股をくぐれ」と言う」シーンだと鑑賞した。
通りすがりの作者が「意地悪はやめなさい」と男の子に諭したか、というところにまで読みが及ぶ。
私は、掲句を見たときに、腕白坊主という登場人物まで思い描けなかった。
くぐるという行為を即、俗世からの脱却と結びつけるのは乱暴かもしれないが、
遊び道具としての竹馬が、その入り口になるというあざやかさが不気味だ。
きっと少女にとって、竹馬と鳥居や茅の輪は同列で、意味も分からず「くゞらされゐる」だろう。
竹馬に誰が乗っているか、なぜくぐるのか、ということを考えるのも面白いが、
ただ、竹馬をくぐる瞬間の少女の神妙な面持ちと白い息を見つめるだけでも面白い一句。
岸本尚毅著『虚子選ホトトギス雑詠選集100句鑑賞[冬]』(ふらんす堂、2012.10)より。